ゴッドイーターとお小遣い

 中学生のころ、僕はよくブッ〇オフで古いゲームや漫画を購入していた。当時の僕は月800円お小遣いをもらっていた。

 

 随分と中途半端な額だ。なんでこんな金額なのかには理由がある。学年が一つ上がるごとにお小遣いの額が100円ずつプラスされる予定であったからだ。つまり、1年の時は800円、2年になれば900円、3年になればお札の1000円がもらえるのである。

 

今はなんだそれ、めんどくさい制度だなあ、と思う。特に900円、硬貨で考えてみてほしい。お小遣いをあげる側の人間は「500円玉+100円玉×4枚」を用意しなくてはいけない。めんどくさすぎるわ!!

 

 結局、中1の時は毎月800円をもらい、中2からは1000円札を渡されていた記憶がある。

 

 僕はこのなけなしのお小遣いで中古ゲームや中古の漫画をよく購入していた。新作ゲームは全く買わなかった記憶がある。なぜ新作ゲームを買わなくなったのか、それには理由がある。

 

 周りの友達が新作ゲームをまったく買わなくなったからである。小学生の頃はポケモンやモンハン...、新作ゲームが出るたびにその話題になる。新作のゲームを買わないことで友達と話が合わなくなるのだ。少なくとも僕の周りにいた子たちはそうだった(中にはポケモンもモンハンも全く興味ない子だっていたからハブられるわけではないのだけれど)。

 

 話を中学生時代に戻そう。当時ゲームに代わり、とある機器が僕らの間では流行した。それが「アイポッドタッチ」だ。正直スマホと何が違うのか僕はよくわかっていない。だって持ってなかったから。

 

 僕はこの人気端末を持っていなかった。おまけに、この時期にパズドラというスマホゲームが大流行する。クラスの友達、果てには担任の先生もやっていた。僕も親のスマホパズドラをやった。人のスマホでゲームをすることに違和感を感じた。

 

 大してハマらなかった。周りのみんなの言う「ゼウス」だの「ホルス」だのはゲットしてなかった。なんか疎外感を感じたのを覚えている。そのせいか今でもパズドラに対して良いイメージはあんまりない。

 

 かくしてスマホゲームにはまらなかった僕はPSP3DSといった携帯ゲームをすることになる。とくにPSPのゲームにはまってた記憶がある。なぜならPSPのゲームは中古で安く買えるからだ。お小遣いが800円だった僕からしてみれば、たったの500円でかつての名作ゲームをやれるのは素晴らしいことだった。メタルギアピースウォーカーキングダムハーツバースバイスリープゴッドイーターなど、ネットで神ゲーなどといわれる作品に触れた。面白かった。

 

 特にゴッドイーターはすごく面白かった。意味もなく2周した。そして面白いものは人に勧めたくなる。ある日、友人に「ゴッドイーターって知ってる?」って聞いてみた。知らないって言われた。ちょっと残念だった。それでも、僕はどうしても自分の好きなゲームの話がしたかった。

 

 だから探りを入れてみることにした。ゴッドイーターの中でエリックという男性キャラがいる。エリックはストーリーの序盤でモンスターに食べられてしまうキャラであり、彼が死ぬ寸前に「エリック!上だ!!」という掛け合いがある。

「エリック!上だ!!」のセリフはネット上で迷言として語られていて、彼は人気キャラになっているのだった。

 

 僕はこのセリフをさりげなく口にして、反応してくれる人がいるかどうか確かめてみることにした。

 

 昼休み、友人6人ほどで外でバレーボールをしていた。ボールを落とさないように延々とレシーブと、オーバーハンドで玉を繋げることがルールだ。友人が少し強めに球を打つ。僕はそれをレシーブする。強めの玉をレシーブすると、反動でバレーボールは空高く上がった。空高く、「上」にボールは上がった。

 

 セリフを言うチャンスだ。ぼくはそう思った。目の前の玉をつなげることなんてどうでもよくなった。そんなことより僕はゴッドイーターの話がしたかった。

 

「エリック!上だ!!」僕は大きな声で言った。

 

 

誰も反応してくれなかった。何それ?って質問すらなかった。だれも知らなかったのである。恥ずかしすぎてニヤニヤしてたことを覚えている。

 

 そのときはじめて僕は自分の趣味嗜好が比較駅マイナーなものに対して向けられていることに気づいた。それまで、僕が好きなものは同じように他の人も好きなんだって思っていたから衝撃だった。当時僕が好きだったゲーム実況者「モンハンどうでしょう」も僕以外誰も知らなかった。僕はオタクなやつなんだって気づいたのはその時だった。

 

 そのときから「他人と違うこと」に対してこだわりを持つようになった気がする。ミーハーなヤツはダサい、流行に踊らされる人間と俺は違うのだ、そう考えていた。今思うと中二病だったんだと思う。

 

 そんな青春を送ったせいか、21になった今でもミーハーな人や量産型といった人間になることを僕は避けている。僕は絶対にマッシュルームカットにはしないし、iPhoneではなくandroidスマホを買う。僕は、世間一般から見ると「ダサいヤツ、変なヤツ」のカテゴリに属する人間になっていると思う。

 

 でも、人の目を気にしないで好きなゲーム、趣味にのめりこめたことはすごく楽しかったし、ちょっと古めゲーム結構好きなんだ~とか言っている自分は嫌いではない。だってそれが正直な感想なんだから。

 

 もし、他人と違うことに対して価値を見出している自分ってカッコ悪いな、おれ中二病なのかなって思っている人がいたら安心してほしい。よくあることだよ。そんな自分を否定しなくてもいいよって言いたい。

 

 でも、僕の「エリック上だ!」みたいなことになるのだけは絶対に避けた方がいい。本当に恥ずかしかったから(笑)