ユーミンの卒業写真

僕はどうも音楽の趣味が同年代の人たちと比べるとちょっと違う。スピッツキリンジストレイテナーミスターチルドレン、オアシスなど。2000年生まれにしてはちょっと古めなのが特徴である。

 

僕が中学1年生の夏に周りの子たちとの趣向の違いを感じた出来事がある。

 

僕たちは、宿泊研修の際に歌う歌を決めねばならなかった。先生があらかじめ歌う曲の候補を3つに絞っており、その中から1つを多数決で決めようということだった。

 

曲はこの3つ。

 

1:蕾 (コブクロ

2:桜 (森山直太朗

3:卒業写真 (松任谷由実

 

今思えば謎の文化だと思うが、先生は僕たち生徒を机に目を伏せるように促した。そして歌いたい曲の名前が上がったら挙手させた。でも、この文化って僕みたいに人に見られていると素直に意見を言えない人間からしたらありがたい。

 

僕は先生が「卒業写真がいいと思う人は手上げてー」といったのを聞いて、挙手した。

 

多数決の結果、「コブクロの蕾」を歌うことになった。ちょっと残念だったけど、なんとなく僕の意見は通らない気はしていた。

 

この時はこの投票に対して深い印象も何もなかったから、すぐに忘れる出来事になるはずだった。だが、後にある事実を知り、僕はこの投票が忘れられぬ出来事となる。

 

ある事実を知ったのは、1学期の三者面談のことであった。

 

面談は、テストの成績や学校生活での様子、あと僕はクラスメイトに針であごにできたニキビを刺されそうになった出来事があったので、それについての話をして終わるはずであった。

 

だが先生から投票の結果についてのある話を聞かされた。

 

どうやら「卒業写真」に挙手をしたのは僕だけだったというのだ。

 

先生から珍しいねと言われた(別に深い意味などは全くなかったと思う)。

 

さっき言った通り卒業写真が投票で一位にはならないだろうとは思っていたものの、まさか賛同者が誰一人いなかったとは、僕は衝撃を受けた。

 

それに付随するかのように、今までちょっと人とはずれている趣味を持っていたことに関するエピソードが頭に浮かんだ。

 

クラスで僕以外誰一人ロックマンをやってなかったこと、背伸びしてコーヒーを飲んでいたのが僕だけだったこと。趣味という観点において僕は周りの人と比べて個性的だった。

 

歌の投票は、僕の趣味趣向がちょっとずれていることの裏付けのように感じられた。

 

恥ずかしいのだけれど、自分一人だったということのショックを受けると同時に、「僕一人だけがあの曲に投票していた」ということに特別感を感じていた。みんなとは、大衆とは違うのだぞ、と。

 

思春期にそんな体験をしてしまったせいだろうか、高校、大学と上がっていく間に、周りのみんながハマっていたであろう音楽にほとんど興味を持とうとせずにして生きてしまった。(お恥ずかしながら「ドライフラワー」はリリース後半年以上たってから初めて聴いた)

 

今思えば、小さなころから他人の意見に従ったりして自主性に乏しい性格だった僕は、せめて趣味だけは個性的でありたかったのかもしれない。だから、流行りに乗ろうとはしなかった。

 

時に周りになじめなくなってしまうのではないかと気にしたこともあったけれど。気が付けば、あまのじゃくな趣味が僕を僕らしくさせてくれる一つの特徴になっていた。

 

それに、僕が過ごしていく中で出会えた友人たちの趣味趣向もそれぞれ様々だった。すんごい古い曲を知っている人、サッカーを見に遠征する人、女児アニメが好きなのをずっと隠してた人もいた(珍しすぎるわ)。

 

自分を趣味を否定しちゃならない。そんな気がする。時には人に教えるべきじゃない趣味(ギャンブルとか)もあるのだろうけど、その否定はしちゃいけない。自分らしさと趣向は深いかかわりがあるような気がしているから。